粉体の流動性向上について研究している.粉体は粒子の集合体で,食品,医薬品など様々な製品の原料に用いられる.品質や生産性の向上のためにサイズの小さな粉体が求められるが,小さくなるほどお互いに付着しやすく,流動性が悪化して生産工程でトラブルが起こる.そのためサイズの小さな粉体の流動性向上を促す手法の確立が重要である.そこで私は【エアレーション】に着目した.これは粒子間に気体を含ませて付着作用を軽減することで,流動性向上を促す手法である.カップ麺の粉末スープを振ると,流れやすいのはその例だ.気体封入のみで不純物の混入を防ぎ,生産工程で有用である.しかしメカニズムの詳細が不明なため,粒子層を振動や回転させることで,発生条件や流動性に及ぼす影響を検討し,メカニズム解明に励んでいる.まず論文調査を行ったが,詳細に関する記載はなく,弊研究室にも先行研究がないため,既存装置での振動実験を試みた.しかしエアレーションはどの条件でも生じず,生じなければ発生条件や流動性の検討が不可能だと判断し,手動の振動実験を考えた.縦と横の2種で,いくつかの条件の振動実験を行うと生じ,そのうえ横振動は,縦の半分の大きさの振動で発生した.これより横振動の方が,エアレーションが生じやすいことがわかった.次に同程度の力で粒子層を回転させると,振動の結果以上に流動性が向上した.これは振動と比べて,回転では粒子層に複数方向の力が働き,気体を含みやすくなったからだと考えている.以上より,振動撹拌よりも回転撹拌を行うとエアレーションが効果的に発生し流動性向上が促されるため,生産工程での流動性のトラブルを改善しうると考えられる.
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