自身の研究において、ウェスタンブロットの条件検討に最もこだわり、努力した。当初OATP2B1に対するウェスタンブロットでは非特異バンドが解析を行うことが難しいレベルで検出されていた。OATP2B1の分子量は既知のため、このバンドがOATP2B1であると、ある程度見切りをつけて解析することはできたが、このウェスタンブロットの結果が自身の論文における最も重要なデータにあたり、ここで完璧なデータを得ることが出来れば満を持して論文投稿が行えると考えていたため、非特異バンドが十分に軽減し、確実にOATP2B1と断言できるデータを何としてでも得ようと条件検討に臨んだ。先輩の助言や書籍、インターネットの情報を参考に、非特異バンドが軽減し得る変更を加えたものの、非特異バンドは軽減する気配がなく、3か月が経過する頃には当時の研究室内にある試薬・設備で実行できるほぼすべての条件の変更を行っていたが、改善することができず行き詰まってしまっていた。見かねた指導教官にウェスタンブロット用の新規抗体を購入して頂いたが、全く別の会社の抗体であったにも関わらず、その抗体を使用しても非特異バンドを生じてしまいOATP2B1と断ずることのできるデータは得ることができなかった。しかし、ここまでやったからには諦めず最後までやり抜きたいと考え、新規抗体と旧抗体についてより子細な検討を行っていたところ、誤って旧抗体の濃度をセオリーの濃度範囲よりもかなり薄い濃度にしてしまった際に非特異バンドが軽減した良好な結果を得ることができた。約半年にわたる条件検討の答えが実験ミスから生じたことに少し力が抜ける思いをしたが、それと同時に達成感も感じることができた。その極めて低濃度の条件において追加実験を行うことにより、OATP2B1と断言できるウェスタンブロットのデータを得ることができ、満を持して論文投稿を行うことができた。
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