小胞体ストレスとは、様々な原因により折り畳み不全タンパク質が細胞内に蓄積し、細胞に悪影響を与えている状態を指す。近年小胞体ストレスは肥満や糖尿病、アルツハイマー病といった疾患との関連が報告されている。
その中でも小胞体ストレスを受けることにより、抵抗性を発現して肥満を引き起こす一因となることが知られているレプチン受容体に着目し、細胞が小胞体ストレスを受けることによって、どのような機序でレプチン抵抗性が引き起こされるのかを解明し、この成果が肥満治療の新たな切り口となれることを目的に研究を進めている。
細胞が小胞体ストレスを受けることで細胞に悪影響が及ぶが、細胞にはこれを回避する機構が備わっており、これは小胞体ストレス応答と呼ばれている。この応答機構には小胞体ストレスセンサータンパクと呼ばれる数種類のタンパク質がそれぞれの経路、機構で機能している。
取り掛かりとして、レプチン受容体がどの小胞体ストレスセンサータンパクと関与しているかどうかを調べるために、それぞれの小胞体ストレスセンサータンパクに特異的な阻害剤を投与し、レプチン刺激を行い、Western blottingにてレプチンシグナルの伝達を確認したところ小胞体ストレスセンサータンパクの1種類であるIRE1の阻害剤が顕著に効果を示した。
この結果を受けて、細胞内タンパク質の相互作用を蛍光によって測定することのできるこれがBRETという方法でレプチン刺激を行った場合のIRE1を観測したところ、IRE1過剰発現細胞においてレプチン刺激を行うと、コントロール群に対して蛍光が変化したため、IRE1の構造変化が起きていることが確認された。
これをレプチン受容体との結合なのではないかと仮定し、まずレプチン刺激を行わずに免疫沈降によってIRE1と主なレプチン受容体であるob-rbとの結合があるかをWestern blottingでみたところ結合の存在が確認され、IRE1の構造変化はレプチンとの結合によるものであるという仮定が正しいと考えられた。
得られた結果から、レプチン刺激を行った際にはより結合量が増加し、逆に阻害剤投与によって結合量が減少すると考えている。
これが正しければIRE1とレプチン受容体の相関関係が見えてくるため、今後はレプチン刺激を行った際とIRE1を阻害した際の免疫沈降を行っていこうと計画を立てている。
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