現在、ドラム式洗濯機は使用水量の少なさや衣類への負担の少なさから普及率が高くなると考えられています。ですが、ドラム式洗濯機の構造上、ドラム回転が床面に伝わり大きな振動・騒音が発生する場合があります。よってドラム式洗濯機の商品性の向上には振動・騒音低減が必須となります。研究では一連動作の中でも高回転で稼働する脱水時を分析対象としました。また、効率的な静粛性向上を目的とし、重点的に対策すべき運転条件や周波数帯の特定を行い、伝達経路解析技術を用いることで静粛性の悪化となる部品を特定することを試みました。まず、騒音測定により問題となる回転数を特定しました。測定には一般的に騒音の分析に使用される騒音レベルに加え、人間の頭部伝達関数が考慮できるダミーヘッドマイクや人間の聴覚特性を考慮した値であるラウドネスを用いた結果、特定のラウドネスの増大が確認できました。次にこれらのラウドネス増大回転帯において周波数分析を行い、低減対象周波数の抽出をしました。騒音測定により静粛性悪化の周波数帯が特定できたため、伝達経路解析を用いてどの部品が騒音の主要因となっているかを把握しました。その結果、1つ目はドラムの支持構造であるダンパー、2つ目はモータからの影響が大きいとわかったため今回はモータの騒音低減を試みました。騒音の原因としてモータの次数成分と構造体の共振が分析によりわかったため、構造体の共振点をずらす試みとしてモータに対して加振実験を行うことで振動のしやすさを表す伝達関数を調査しました。その結果、モータブラケット部において対象周波数帯でピークを確認することができ、モータブラケット部の剛性向上を行うことでダミーヘッドマイクでの騒音測定では約10 dBの低減をすることができました。以上です。
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