私の研究ではテクノロジーによって⼈間の五感に加えて,新たに遠隔における感覚を追加した⾝体機能拡張の実現を⽬指す.現在,機能拡張の分野では視覚的な拡張ができるVRがあり,その臨場感を与えるための振動等を使った触覚インターフェースが盛んに研究されている.しかし,同じ⽪膚感覚の⼀つである痛覚を⽤いたインターフェースに関する研究例は少ない.痛みは⼈間にとって危険を知らせる重要な⽣態信号の⼀つであり,本研究では安全な疑似的な痛みを⽤いた⼈間と機械の新しいインターフェースを開発している.この痛覚の⽣成には、⽪膚への温度刺激によるサーマグリル錯覚を利⽤する.これは温刺激と冷刺激を同時に⽪膚に与えることで,冷刺激部分に痛覚が⽣じたと錯覚させる⼼理・⽣体現象である.これにより例えば遠隔にあるロボットが危険な状況に遭遇する場合,それを痛みとして⼈間に伝える.⼈は痛みを感じることで危機を察知し,回避する習性をもつ.その習性を⽣かし,実際には遠隔地にあるロボットの危機を⾃⾝へ痛みとして感じることで,ロボットがあたかも⼈間の拡張された体の⼀部となる.またこの拡張は物理空間に限らず,仮想空間での実装も容易である.
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