電子励起された蛍光発光性分子の構造解析に関する基礎研究である。有機ELに応用されている蛍光発光性分子は、エネルギーを与えると光を放出する特性を持つ。しかし、短寿命かつ発光効率が悪いなどの課題があり、これらの特性は、エネルギーの高い状態(電子励起状態)の分子構造と密接な関係がある。私の研究では、代表的な蛍光骨格であるアントラセンを含む9-フェニルアントラセン(9PA)に注目した。
電子励起状態の分子構造を知る有用な方法に過渡ラマン分光法がある。この分光法は、短寿命な電子励起状態分子の”ある瞬間”のスペクトルを測定する方法であり、電子励起状態の分子構造を間接的に観測できる。
これまでの研究では、9PAの実測スペクトルと計算の対応が不十分だった。その対応を正確に行うために、軽水素(H)を重水素(D)に置換した重水素化物に注目した。これらを分光測定すると、振動バンドのピーク位置がシフトし、より各ピーク位置の議論ができると考えた。しかし、9PAの重水素化物は市販で売られていない。そのため、私の研究では9PAの重水素化物を合成し、それらの過渡ラマン測定により、電子励起された9PAの分子構造の解明を行う。
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