(a) まずは対大学(toB)、対大学生ユーザー(toC)のそれぞれに分けて現状分析を行う。
【前提条件】
・日本の大学数は令和2年度時点で795校。最多は東京で143校。
・10校の売り上げより、大学側の課金は20万円前後が相場。
・登録は資金に余裕のある有名私立大学が多く、逆に国立大や公立大は少ない。
○toB
少子高齢化の進展で大学経営はますます厳しくなっていくと予期されており、その中で「デジタルシフト」への焦りからユニバサーチへ掲載する大学が出てきている。しかしこれはポジティブな動機とは言えず、むしろ「よく分からないけどとりあえず登録してみよう」程度の認識でいる大学が多いように感じる。
結果として予期していたより広告効果が見込めていないという悪い反応へ繋がってしまっており、大学側のユーザーが伸び悩む原因となっている。売り上げが伸びつつあるのは事実だが、toBユーザーからの評価を上げられない限りは、掲載してくれる大学の数を増やすことも難しい。初期の大学登録数を増やすために「数ヶ月間無料掲載キャンペーン」のような施策を打っていると考えられるが、その最初の数ヶ月で結果を出せないとその後の有料プランへの移行が進まない。
○toC
受験生ユーザーからの評価が高いのは、ユニバサーチならではの「大学ホームページに分散している大学情報の検索や受験日程を把握して計画する機能」が役立つと感じられているためである。
だからこそ余計に、受験生は自分が受ける大学は全て登録されていて欲しいと感じ、ユーザーからの問い合わせ増加に繋がっている。東京だけでも143校ある大学のうち、売り上げだけで考えれば情報掲載は10校、無料掲載を合わせても20~30校に留まると考えれば、とても7000人のニーズを満たすことはできていない。
以上の分析より、仮説を立てる。
〈プラス面/強み〉
・ユニバサーチの「大学ホームページに分散している大学情報の検索や受験日程を把握して計画する機能」は受験生ユーザーにヒットしている
社長が考える大学生のニーズは変わっておらず、そこを上手く補うサービスの仕組みを整えていることが受験者ユーザーからの評価の高さや登録者数の伸びに繋がっている。企業として進めていきたいサービスの大きな枠組み自体は間違っていないと考えられる。
〈マイナス面/弱み〉
・無償プラン→有料プランへの移行に苦労している
無償で掲載をできる状態をいつまでも続けられるわけではなく、どこかのタイミングで費用を払ってもらって掲載する形にしなければならない。しかし、実際に売り上げが立ったのは10校であり、20万程度のお金を払ってまで掲載はしないと判断する大学が多いと考える。
実際に「思ったより広告効果が見込めていない」という意見も出ており、大学側ユーザーからの評価を上げられていない。
・1人で業務をカバーしきれていない
アプリ開発、メンテナンスを行うことは1人でも可能だが、その分特に大学側ユーザーの不満や要望を十分に汲み取れていないように思われる。UXやUIのようなアプリ上の体感ではなく、そもそものコンテンツや掲載の仕方などについて、特に大学がどのように情報を発信していきたいのかすり合わせができていないのではないか。
・1番の課題となっているのは大学側ユーザーの増加
ユニバサーチとして1番の課題になっているのは、大学側ユーザーが伸び悩んでいることではないか。基本売上は大学側の課金に依存するため、どれだけ受験者ユーザーが増えても企業の売上拡大には直接繋がらない。実際に受験者からも「xx大学の情報はいつ掲載されるのか?」という問い合わせが増えており、このままの掲載数では受験者ユーザーが離反するリスクもある。
(b) 次期経営計画
受験生ユーザーに向けては1つ、大学側のユーザーに向けては主に3つの戦略計画を立てる。
〈受験生ユーザー向け〉
・さらなるサービス拡張を図る
① 現役大学生の声を聞く掲示板
現役大学生からのその大学に関する意見や魅力、おすすめポイントなどを聞き、掲示板やまとめ口コミのような形で閲覧可能にする。
② 現役大学生への相談会斡旋、企画
受験生がメッセージや実際に会うことを通して現役大学生に触れ、よりその大学を理解できる状況を整える。イメージでは就活時の合同説明会を、企業を大学の学生に置き換えるようなもの。
受験生に向けたサービスのメインはユニバサーチの「大学ホームページに分散している大学情報の検索や受験日程を把握して計画する機能」であるが、これは大学側のユーザーが増えない限りこれ以上改善することが難しい。したがってそれ以外のサービスを拡張できるよう行動していく。
特に②の相談会などは、各大学が生協などの生徒主催で動いている場合も多いため、その学生グループと協力したい。大学入試情報の掲載を公式な「ハード面」とするなら、学生主体の口コミや課外活動の内容説明といった「ソフト面」でもプロモーションを進めることで、より受験生に価値のあるサービス作りを狙っていく。
ソフト面での実績が認められれば、大学側がハード面の情報掲載に積極的になってくれることも期待できるのではないか。
〈大学ユーザー向け〉
・営業活動を東京都内の私立大に限定
○私立大には資金が比較的豊富である
○公立大や国立大は試験日程が同じため併願は難しいが、私立大は学部も多く併願可能性が高い
○東京都にある私立大学は129校と突出しており、志望する学生も多い
この3つの理由から、私立大に絞った営業活動を行う。ユニバサーチはまだ若いサービスのため、どこかの分野で強みを作る必要がある。最終的に全国区、あらゆる大学を囲うことが目標だが、現実では資金面も含めて難しい。
そこでまずは「都内の私立大を知りたいならユニバサーチがいいよ」と評判が立つことを目指す。多少無料期間を延長してでも一度都内の大学を包括的にカバーできれば、
「受験者ユーザーからの評価向上」→「大学の広告効果に繋がる」→「ユニバサーチへの大学側からの評価向上」→「有料プランへの移行増加」という流れに持ち込めると考える。
「とりあえず行動を起こさないと」という大学側のネガティブな動機でなく、「ユニバサーチへ登録してより宣伝に力を入れたい」というポジティブな動機を得ることを目指す。
・「カスタマーサクセス職」を新設
社員を2名ほど増員し、一度ユニバサーチを利用してくれた大学にどのような点が良かったか、あるいは改善して欲しいかといったアフターフォローや、どのように情報を掲載すれば良いかの相談に乗る「カスタマーサクセス職」を任せる。
(あるいは社員にアプリ開発を任せ、社長がカスタマーサクセスにまわっても可)
大学側ユーザーからの意見を頻繁に聞き入れる機会を設けることで、アプリ内だけでなく、サービスの枠組み全体を向上させられるようにしていく。
・受験生のニーズをまとめた資料の作成
より大学側にとってユニバサーチの価値を高められるよう、受験生の志向や大学選びでの軸をアンケートで収集し、大学側へ提供する。ユニバサーチで情報掲載をしてくれれば、その受験生のニーズ資料を閲覧できるという形が金銭的には理想である。
そうでない場合は、ある程度受験生のニーズ資料を簡潔にまとめて大学情報を入力すればインターネットでアクセスできるようにする。アクセスの際に入力された大学情報を辿って、営業活動などにつなげる形でも活用することができる。
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