課題として、事前に考えてくるように言われました。
まとめたものをここで全て伝えました。
井上特殊鋼の優位性として、まずビジネスモデル自体が挙げられます。一般的な鉄鋼商社では、鉄鋼メーカーから鉄を仕入れ、それを使って製品を作る企業に販売をしています。しかし、卸売のビジネスでは商材の差別化が難しく薄利多売が当然で、利益率はもちろん低くなります。さらに、近年は新興国の製鉄技術が向上し、さらに競争がヒートアップしてきているため、生き残りは熾烈になっていきます。一方で井上特殊鋼のモデルでは、単に素材を取引するだけでなく、完成品メーカーの抱える課題をヒアリングして、それぞれに合った個別のソリューションを提供しています。その際、2500社以上の町工場から適切な場所を選択し、製品の価格決定まで個人で行う事ができます。これによって他社との差別化ができ、課題をピンポイントで解決できる製品を、高い利益率で提供することができます。これが、売り上げが半減しても赤字にならないという強靭な収益構造に繋がっています。
次に、マーケットの幅が広いという優位性があります。完成品メーカーが抱える課題を解決する製品を生み出す、というビジネスモデルなので、鉄を多く使うメーカーだけでなく、電子部品・エネルギー・医薬品業界や私の専攻である食品業界にまでその需要は存在します。これらの業界は製品自体に鉄が使われない、もしくはほとんど使われないため、薄利多売の鉄鋼商社とは相性が悪いですが、井上特殊鋼は材料ではなく加工品を扱うため、製品ではなく設備部品を取り扱うことができることに強みをもっています。その触手を国外に伸ばせば、活躍のフィールドはさらに広がります。まだまだ事業の限界は見えません。さらに鉄鋼商社とはいうものの、これまで培ってきたネットワークを通じて、鋼材に限らず他素材の製品を提供することができるので、特定分野の市況に影響を受けない事業となっています。
しかし、このビジネスモデルは人が重要です。なぜなら、個人が町工場の選定からソリューション提供、値段の決定まで行うからです。また、高い利益率を維持するには新規開拓の数を維持・あるいは増加させていく必要があります。リピーターは井上特殊鋼の相場を理解していくため、課題解決のありがたみをより感じてくれるであろう新規顧客を、開拓し続けなければならないのです。現在の井上特殊鋼には、それを可能にする、「魅力的な人」があります。これが最も重要な優位性だと考えています。見た目だけ立派な車があっても、エンジンがボロボロでは機能しません。井上特殊鋼の社員の方々が、責任を持って仕事を行い、前向きに取り組み続けるからこそ、実際の高利益率・高生産性が実現できています。実際に会って感じたことですが、社員の方々は皆、仕事を楽しんでいます。好奇心の塊みたいな人ばかりです。そして、学生に対して、とても前のめりになって話してくれました。辛いことももちろんあるはずですが、仕事が好きだから、面白いからここまで熱中できるのだと思います。井上特殊鋼では、仕事において裁量権が大きく、自由度が高くなっています。そんな状況を楽しんで、ひたむきに頑張れる社員の方々がいることは、井上特殊鋼における大きな優位性です。
しかし、どこの企業もそういった人が欲しいはずです。私の学ぶコースは、農学部で最も人気の無いコースであるため、興味を持って前のめりに研究を行なっている人はほとんどいません。なぜ、適切な人材を集められるのでしょうか? Big companyではなくGood companyを目指している井上特殊鋼は、社員の方がゲームのように楽しめるように、新規開拓奨励金やイベント奨励金などを導入しています。社長はビジネスを「大人のゲーム」と例えており、それを社員に体感させようとしています。さらに採用活動への投資も凄まじく、全社利益の1ヶ月分を採用活動に投資したこともあるほどです。このように、井上特殊鋼のビジネスモデルに適した人材が前のめりになれる制度の充実と、採用活動への大きな投資が、今の井上特殊鋼の社員の方々を作り上げています。
最後に、このような改革をもたらす事ができたのは、井上特殊鋼が非上場の企業であるからです。株主の意向に沿う必要がないため、自分たちの目指すべき方向を定めて方向転換する事ができました。その結果、他の鉄鋼商社とは違う、参入障壁の高いビジネスモデルを持った井上特殊鋼が生まれました。
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