私にとって自分のためになった授業は、大学時代に受講した「ソーシャルコラボ演習」という授業である。この授業は地域から持ち込まれる社会課題(私の授受講した学期のクライアントは京都府立堂本印象美術館様)に対して全15回の授業で新たな解決策を企画検討し、実行までを行うという授業内容だった。この授業で学んだことの中で私が最もためになった内容は、「顧客に寄り添ったサービスづくりの精神」である。
「10〜20代の若者客層を増やしたい」という美術館からの要望に対して、いかに斬新な企画を立案し、論理的にクライアントを説得するかを考えていた私たちは失敗ばかりだった。そんな中、教授から伝えられた、「学生の自主企画になっていないか?美術館とコラボでやる意味を考えてみなさい。」をきっかけに、クライアントとの打ち合わせを重ね、「学生がいなくなった後、私たちだけで企画を続けていける自信がない。」という相手の本音を聴いた上で企画を詰め直し、無事に予算をいただき企画を実行することができた。
この授業以来、私はインターン先でイベントを企画する際にも、まずは必ず顧客の声を直接聴いた上で、イベントを設計するようになった。その結果として実際に教室に通う生徒や保護者の声を直接聴きながら、コロナ禍で開催したオンラインイベントでは、過去5回のオフラインイベントの満足度平均4.23/5点を上回る4.7/5点を獲得した。
私は教育という仕事に携わっている人間には誰しもサービス作りの際に、自分の教育信念のもと、「こんな体験を届けられたらきっと生徒たちのためになる。」「この授業は生徒たちにとってきっと学びにつながる。」のように自分よがりな教育手法に陥ってしまう場面が時々あると考える。関わる人たちをより良くしたいという想いが人一倍強いからこそ、常に教育の受け取り手である顧客のニーズや想いに寄り添った事業開発が重要になるとこの授業を通して考えるようになった。
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