
23卒 インターンES
バイオ部門インターンシップ
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Q.
新型コロナウイルスの検査体制について思うところを自由に表現してください。
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A.
日本における新型コロナの検査には3種類あります。具体的にはPCR法、抗原検査、抗体検査です。この中で最も実施されているのはPCR法です。しかし、私は現状のPCR法をより簡便、検査時間を短縮したものに変えて適用すべきであると考えます。PCR法の測定原理は、以下の通りです。最初に検体からRNAを抽出し、DNAに逆転写します。次にこのDNA、DNA合成酵素、大量のオリゴヌクレオチドを混合して、反応液を作ります。この反応液を加熱すると、2本鎖DNAが変性して1本鎖DNAになります。次に急速冷却すると、結合(アニーリング)したプライマーの3'端を起点としてDNAポリメラーゼが働き、1本鎖部分と相補的な2本鎖DNAが合成されます。これで2倍量のDNAが生成されます。このように、PCR法はDNA鎖長の違いによる変性とアニーリングの違いを利用して、温度の上下を繰り返すだけでDNA合成を繰り返すのです。DNAを2倍、4倍、8倍、16倍…と増幅する際に新型コロナウイルス特有のDNA配列の増幅がみられた場合、陽性と判定されます。 この原理を踏まえると、現状のPCR法のデメリットは2つ挙げられます。1つ目は、感度が非常に高いためにたとえ1個のウイルスがあっても検出してしまうことです。これは擬陽性判定につながり、医療体制の逼迫につながると考察しています。2つ目は、加熱と冷却を繰り返すために長時間の検査時間が必要なことです。結果が出るのに時間がかかるために検査結果待ちの人が多く、本来であれば軽症で済んだ患者も重症化してしまう、という例が報告されています。そこで、私が考える改善策を2点挙げます。1点目は、Ct値を小さくすることです。DNA増幅のサイクル数であるCt値は、日本のPCR検査では40~45です。しかし、厚労省の退院基準及び濃厚接触者に対する検査等の見直しについての資料によると、Ct値が35以上のウイルスは分離されないと記載されています。また、Ct値が35以上であると、生存可能なウイルスは3%のみであるとScience誌で報告されています。そのため、正確な検査結果を出すためには日本のPCR検査のCt値は35以下にするべきであると考えています。さらに、各企業が販売している検査キットのCt値が揃っていないことも課題です。使用する検査キットによって結果が異なることを防ぐために、測定条件は各企業で揃えるべきであると考えます。2点目は、RNA抽出及び精製・DNA増幅を行う時間を短縮することによる検査の効率化です。そこで、貴社のSARS-CoV-2 Detection Kitのような簡便な操作で迅速に測定ができる検査キットは検査機関でさらに広く用いられるべきであると考えています。検査時間が短縮することで検査を受けることへのハードルが下がり、感染者の早期発見及び治療につなげることができると予想しています。 以上より、私は現状のPCR検査の実験操作時間の短縮と測定条件について改善が必要であると考えます。さらに、上記では言及しませんでしたが、そもそも感染者数で議論するのではなく重傷者や死亡者数で感染拡大を議論すべきです。症状が重い人が適切な治療法を受けられるように、今後の検査体制を柔軟に変えていく必要があると考えられます。 続きを読む