私は火力発電のタービンに耐熱材料として使用される超合金の高温状態における組織変化の速さを研究しています。2011年の東日本大震災以降、原子力発電の割合が減少し、それを補う形で火力発電の割合が増加しています。今後もしばらくはこの傾向が続くと考えられ、効率や安全のために新鋭の火力発電が求められています。発電の効率を上げるためにはタービンに入る蒸気の温度を高温にすることが効果的です。しかし、高温の蒸気に触れるタービンのブレード内部では元素が拡散し、初めに構成されていた高温に強い組織が崩れ、破損や劣化につながります。一般に合金は添加されている元素によって組織を形成し、それにより様々な性質を示します。しかし、高温になると原子の動きが活発になり拡散することで、形成されていた組織が変化するということが起こります。つまり高い性能を持つ組織が形成された合金も高温状態が続くことで劣化していく可能性があります。私の研究では新規耐熱材料として期待されているCo基超合金を対象として、合金内に含まれる元素の拡散係数を調べています。この拡散係数は各元素が広がる速さの指標として用いることができるため、組織変化の様子を知る手掛かりになります。本研究によって超合金の組織変化の様子を知ることで、劣化の予測、また劣化しにくい超合金ができると考えています。
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