17卒 インターンES
日清紡ケミカル
17卒 | 奈良先端科学技術大学院大学大学院 | 男性
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Q.
研究概要をA4サイズで1枚提出してください。
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A.
【研究概要】分子間における相互作用として、水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用が知られている。中でも非常に弱い相互作用であるファンデルワールス相互作用は、高密度ポリエチレンの高硬度化に代表されるように、高分子の物性を決める重要な要素である。このように低分子では材料創生に組み込むことが難しい弱い相互作用であっても、高分子では強く増幅されて発現する。相互作用の強さについて研究を行った例として、ポリマーブラシの静電相互作用による接着1)、AFM を用いたDNA 一本鎖同士の相互作用の測定2)、表面力測定による自己修復ポリマーの評価3) などが報告されている。しかし、これらは静電相互作用とファンデルワールス相互作用を主とした力の総和の値として議論されているため、ファンデルワールス相互作用についてのみの測定についてはほとんど報告されていない。 そこでポリ乳酸(PLA) に注目した。PLA は、生分解性、生体適合性を有するポリエステルであり、主鎖に不斉炭素を有するため、モノマーユニットに光学異性体としてL 体とD 体が存在する。L 体ユニットで構成されるポリ(L-乳酸) (PLLA) とD 体ユニットで構成されるポリ(D-乳酸) (PDLA) は溶液中において、それぞれ単独の場合よりも効率的に高分子間相互作用が働き、ステレオコンプレックスと呼ばれる複合体を形成する(Figure 1) 4)。PLA のステレオコンプレックスは、ホモ結晶と比較して、融点や力学的強度が向上させることが知られている5、 6)。しかしながら、ステレオコンプレックス形成の単一高分子鎖に働く力を直接測定した例はない。ファンデルワールス相互作用などの弱い相互作用に関する研究は、高分子間相互作用の基礎的な知見を与えるため重要と考えられる。 続きを読む
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Q.
質問1の続き
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A.
本研究では、高分子間相互作用に関わるファンデルワールス相互作用について、「単一高分子鎖間に働く力」を見積もることに挑戦する。異なる2つの基板界面に様々な量のPLLA とPDLA の薄膜を調製する。これら薄膜界面同士を接触させたときに界面に働く力を測定し、量と相関させることで、単一高分子鎖の相互作用が明らかとなる。将来的には、ファンデルワールス相互作用の特徴である異方性と相補的な形の認識を応用し、互いの界面組成を認識して接着力が異なる選択的接着材料の創製を目的とする。 本研究は、高分子間相互作用に関わるファンデルワールス相互作用を測定するという学術的な特色がある。また、相補的な相互作用という特徴を利用し、選択的接着材料へ展開できる特徴がある。その結果、高分子化することで強く働く相互作用を見積もることができ、選択的接着という新しい材料の創出が期待される。【参考文献】1) M. Kobayashi et al.、 Soft Matter 2011、 7、 5717.2) A. Alessandrini et al.、 Meas. Sci. Technol. 2005、 16、 R65.3) A. Faghihnejad et al.、 Adv. Funct. Mater. 2014、 24、 2322.4) Y.Ikada et al.、 Macromolecules 1987、 20、 906.5) T. Hideto、 Macromol. Biosci. 2005、 5、 569.6) K. Fukushima et al.、 Polym. Int. 2006、 55、 626. 続きを読む