ここでは、インバウンド増加に伴う日本の温泉旅館の課題を、大きく三つのキーワードに分けて考えたいと思います。
まず一つ目のキーワードは、“本来の日本と外国人の中のJAPANの違い”です。このキーワードから具体的な問題点を挙げると、“温泉旅館という和式空間の中に外国人がくつろげる工夫をどれだけするか”と“本来の日本文化を押し付けるか、外国人が期待する日本像に染まるか”の二つの論点があると考えました。
一つ目の論点である“工夫をどれだけするのか”というのは、完全に和式にしてしまっては、外国人の方に対して旅館本来の“癒し”や“くつろぎ”を提供できないが、反対に外国人の方の生活スタイルに合わせすぎてしまうと、温泉旅館における日本らしさがなくなってしまうのではないかということです。例えば、畳に蒲団では外国人の方は疲れを取る事ができないというお話を耳にしたことがあります。しかし、疲れが取れないからと言って、蒲団をベッドに置き換えてしまっては、温泉旅館における日本らしさがなくなってしまいます。また、二つ目の論点である“本来の日本と外国人が期待する日本像”というのは、お土産業界に特に顕著に現れていると思います。例えば、日本人の目から見ると、日本のものではないと感じる“kimono”が“日本らしさ”として外国人に大変人気があることが挙げられます。お土産業界は、現在外国人の期待する日本像に合わせ、本来の日本とは違う“日本”を世界に発信しているようですが、同様に“日本らしさ”を求められる旅館業界は、今後、“日本らしさ”を求める外国人に対し、どう対応していくのか考える必要があるのではないでしょうか。
また、二つ目のキーワードは、“文化の違い”です。もちろん、言語の違いも一つの課題であると思いますが、ここでは主に文化の違い、特にお客様間における違いを取りあげたいと思います。お客様間における文化の違い、それは従来の顧客である日本人と、増加傾向にある外国人顧客におけるマナーの違いを指しています。日本人が当たり前としている“暗黙の了解”をどのように外国人の方に知ってもらうか、または無意識の内に守る仕組みを作るかというように、両者が快適にくつろげる空間を作ることも今後課題になってくるのではないでしょうか。
三つ目のキーワードは、“外国人向けの入り口”です。国によって、旅行代理店を使うかネットで自ら検索するかなど宿への入り口が違うため、その国に合った入り口を正しく分析し、正しいアプローチをする必要があるのではないかと考えました。
以上、三点がインバウンドの増加に伴い、今後の温泉旅館の課題になると思います。
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