
23卒 本選考ES
総合職
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Q.
卒業論文のテーマと内容を教えてください
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A.
分子シミュレーションを用いたエタノール混合によるベシクル構造転移機構の解明 癌やウイルス感染症の治療薬である核酸は単体では不安定なので、脂質膜が袋状に閉じたベシクルというカプセルに包んで、体内に投与し細胞まで運びます。実用化にはベシクルのサイズが重要で、粒径100nm以下である必要があります。ベシクルは、脂質分子を溶かしたエタノール溶液と、水をマイクロ流体デバイスの流路内で混合することで作成することができます。しかし、ベシクル形成の分子機構の詳細は全く不明です。この機構を理解することは、粒子サイズのより精密な制御に必要ですが、形成過程の観察は困難です。そこで、ベシクル形成過程ではなくその逆過程、即ちベシクル溶液にエタノールを加えた際の崩壊過程を調べることで、ベシクルの構造変化を調べることとしました。すると、実験でベシクル崩壊過程において一時的に脂質膜が積み重なったマルチラメラ構造が観測されました。私は、この特異的なベシクル構造変化のプロセス解明に分子シミュレーション(MD)で取り組みました。まず、エタノールとベシクル溶液は流路内で均一に混合していると仮定し、ベシクル系の水を50%エタノールに変えるMDを行いました。ベシクルは崩壊し紐状に転移しましたが、マルチラメラは形成されませんでした。次に、流路内では不均一に混合が起こると仮定し、局所的なエタノール濃度揺らぎが関与していると仮説を立てました。この検証をすべく、ベシクル溶液のエタノール濃度を一度上昇させて、その後希釈するMDを行いました。その結果、複数のベシクルはエタノール濃度の上昇で紐状となり互いに融合し、希釈によりベシクルが幾重にも巻いた構造であるマルチラメラベシクルに構造転移することが観察されました。これより実験で観測されたマルチラメラ化は、単一膜のベシクルが一度紐状となりマルチラメラベシクルへ移行して生じると判明し、混流時のエタノール濃度揺らぎに起因する現象であることが明らかになりました。 続きを読む
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Q.
苦労した点・工夫した点を教えてください
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A.
実験で観測されたマルチラメラをMDで再現することが最も困難でした。実験と同様の条件でベシクル溶液とエタノールを混合すると、ベシクル崩壊が起こるのみで、マルチラメラの生成は確認できません。両親媒性分子であるエタノールは脂質膜を崩壊させるため、この結果は妥当であり、マルチラメラという規則的な構造の再形成は起きるはずがありませんでした。ベシクルの数やエタノール濃度を変更しても結果は変わらず、実験でマルチラメラが観測されること自体が、特異的ではないのかと考えました。そこで、流路内でのベシクル溶液とエタノールの混合は一様に起こらないと仮説を立てました。濃度揺らぎがある状況をMDで再現しようと模索した結果、マルチラメラベシクルの形成を捉えることができました。一度は諦めかけた課題ですが、実験条件に近づくよう仮説を立て直し、検討し続けたことで生成プロセスを解明でき、第一著者として論文の執筆も決定しました。 続きを読む
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Q.
修士論文のテーマと内容を教えてください
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A.
分子シミュレーションによるエンドソーマルエスケープ機構の解明 脂質ナノ粒子(LNP)とは脂質を主成分とする粒子で、核酸医薬品を内包し細胞まで届けるキャリアとして利用されています。昨今では、新型コロナウイルスに対するワクチンに採用されており、癌治療や再生医療への応用も期待されています。ただ、医薬品を包んで、狙った位置に届けた後、到達した細胞内で核酸医薬品がカプセルから放出される効率は、実は2%未満といわれています。私はMDで、この放出効率を向上させるために、薬剤放出メカニズムの解明に取り組んでいます。LNPの細胞取り込み機構を簡単に説明します。LNPは細胞に入った後、一重の生体膜からなる小胞のエンドソームに運ばれます。エンドソーム内でLNPが分解される前に、核酸はエンドソーム外の細胞質へ放出される必要があります。しかし、このメカニズムは不明なので、LNPとエンドソーム膜のMDで核酸の放出機構を探っています。この結果、100nsでLNPとエンドソーム膜が接触し、時間の経過とともにLNPがエンドソーム膜にめり込む様子が確認されました。これは、LNPに含まれるカチオン性脂質と、エンドソーム膜に含まれているアニオン性脂質間のクーロン相互作用によると考えられます。また、LNPとエンドソーム膜の接触点に着目すると、LNPに内包された核酸の一つが徐々に引き出され、エンドソーム膜に接触する様子が観測されました。これらの結果より、エンドソーム膜外に核酸が放出されるためには、初めにLNPとエンドソーム膜の接触が必要であることが明らかになりました。今後は核酸がエンドソーム膜外に出ていくプロセスを探ります。更に、後々にはファイザー社やモデルナ社などが公開しているLNPの組成を再現し、同様のMDを行い比較することで、薬剤放出効率について議論する予定です。最終的にはLNPに用いる新しい脂質分子を設計しMDを行うことで、より効果的なLNPの設計に挑戦します。 続きを読む
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Q.
苦労した点・工夫した点を教えてください
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A.
LNPとエンドソーム膜のMDに取りかかる前の準備が膨大で苦労しました。このMDは、原子数が非常に多いため、既存の原子モデルでは扱うことが困難です。そこで、複数の原子を一つの粒子として扱う粗視化モデルを作り、計算コストを下げる必要があります。このモデルを作成するためには、多くの自由エネルギー計算が必要です。作業を効率化するために自由エネルギー計算に必要な42個のファイルを自動的に作成するプログラムを書きました。プログラミング初心者でしたが、既存のプログラムや参考書を読み込み、Python、シェルスクリプト、tclスクリプトを用いて、1日かかる作業を僅か数分で終わらせるプログラムを作成しました。これより必要な全てのファイルを作成でき、自由エネルギー計算に素早く取り掛かれるようになりました。作業効率の大幅な向上に繋がっただけでなく、人為的なミスも無くなり、仲間の研究にも役立てることができました。 続きを読む
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Q.
これまでに最も力を入れて取り組んできたこと
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A.
将来はグローバルな視点で仕事をしたいと考え英語学習を始めました。三カ月に一度のTOEIC受験で実力を確かめ、効率の良い学習法を模索した結果、1年で545点から810点まで伸ばすことができました。しかし点数の割に英語力を獲得した感覚は全く得られず、生きた英語を習得したいと思いました。そのために英語を楽しむことが大切だと考え、憧れの国際交流と化学分野での使用を目的に、パリ、モスクワ、フロリダ、シェムリアップ、上海にて大学訪問や学会参加を行いました。当初、会話を成立させるだけで精一杯でしたが、化学の話になると不思議にも話が弾みすっかり意気投合しました。この経験で英語力獲得だけでなく、世界で活躍している同じ専門分野の人々と交流する楽しさを知りました。特に文化の異なる環境で育った人々と共通の課題を討議することは、私には持ち合わせていない新しい発想や考え方を生み出す最良の機会となることがわかりました。 続きを読む
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Q.
これまでにチーム・仲間と協力し取り組んだこと
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A.
研究用Q&Aウェブサイトを作りました。配属直後戸惑ったのは、研究に関する専門知識を学ぶ以前に、コンピュータのOSやプログラミングに関する一般的な知識が備わっていないと研究に着手すらできないということでした。私は、同様の悩みを配属された学生が毎年経験すると気づき、皆の困りごとを解決したいと考えました。そこで、直面した問題と解決策をサイトで共有できれば、研究の強力なサポートツールになると同期に発案しました。誰もサイト作成経験がなかったため、作成方法から模索し、誰もが気軽に更新できるサイトを目標に話し合いました。パソコン環境により同様の操作をしてもエラーが生じるなど、問題が出る度、解決策を探し改善を続けました。最終的に専門的な知識が無くても簡単に編集できるサイトが完成しました。「疑問が速やかに解決でき、新しい研究方法を知るきっかけにもなった」と学生から好評で、全員の研究効率の向上に繋がりました。 続きを読む
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Q.
身近な人からどのような人だと言われるか、その理由
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A.
運が良い人 私は常に物事をプラスに捉えることを大切にしており、思い通りになった時もそうでない時も学びと考えるようにしています。常に明るく前向きであるため、運が良いと言われるのだと思います。また、物事が必ずうまくいくという自信を持っていれば結果的に良い方向に進み、実際に幸運に恵まれることも多くあると感じています。 続きを読む
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Q.
あなたが仕事をする上で、大切にしたい価値観や求める働き方・職場風土を具体的に記入してください
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A.
全員が社会貢献を目指す職場で働きたいです。私は、社会に大きく貢献したいという夢があります。仲間と意見交換し、同じ目標に向かうことで、一人で成長するより早く、更に高く成長できると考えています。そのため、方法は違っても同じ目標や夢に向かって進める人たちと仕事のできる職場風土を求めます。大切にしたい価値観は、私たちは地球の一員であるということです。この価値観を共感できる仲間と働ければ理想的です。 続きを読む
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Q.
入社後にトヨタでやりたい事と、それに繋がるご自身の強み・能力・経験を具体的に記入してください。
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A.
モノづくりと環境の共存に強い関心を持っており、計算化学を用いて既成概念を打破した製品を生み出したいです。社会だけでなく地球のためのモノづくりに注力し、自動車業界の世界基準を創ってきた貴社で、未来を見据えた先端材料研究に携わりたいです。材料は車の性能や品質を左右する基本で、高品質であればニーズを満たすだけでなく、地球環境をも変える力があります。そこで貴社で活用されている分子シミュレーションを用いて、リサイクル可能な新規材料探索から環境に放出された際のリスクの見積もりまで行います。これにより、試作と評価を繰り返す従来の開発方法から脱却し、研究効率の底上げと地球のためのモノづくりを実現させたいです。 続きを読む