イオン液体膜を用いた水とエタノールの分離について研究を行っている。イオン液体とは、岩塩が液体になったようなものである。特徴としては、ほとんど蒸発することがないため、宇宙空間に投げ捨てても液体のまま漂っているとされる。また近年では、多種多様なイオン液体が開発され、物質による溶解性を選択することができる。一般的に水とエタノールとの分離は、物質の沸点の違いを利用した蒸留と呼ばれる手法が用いられる。しかし、蒸留は熱を加えて液体を蒸発させるためエネルギー消費が大きい。また、何度も蒸留を繰り返すことでエタノールが一定以上の割合になると、それ以上高濃度に分離ができなくなる。それに対して液体膜を用いた膜分離では、物質がどれだけ液体膜に溶けるかによって分離が行われる。そして膜に溶けたエタノールを真空引きすることにより分離を行うことができる。(このような手法をパーベーパレーション[PV]とよぶ。)だから熱を必要とせず、比較的省エネルギーで分離操作を行うことができる。エネルギー負荷を減らして分離する技術を確立することが出来れば、環境問題負荷を軽減することができるのではないかと思いテーマを選択した。課題としては、エタノールを選択的に透過させるイオン液体膜を探索することが挙げられる。これまでのところ、ベンゼンを混合溶液に加えることで、エタノール回収効率を向上させることがわかっている。だから、この知見をPVに活かすことによって、より実用レベルに近い性能を出したいと考えている。
続きを読む