【光の未来を拓く】【21卒】ソニーグループの技術職の本選考体験記 No.8895（東京工業大学大学院/男性）（2020/7/21公開）

●希望コースで取り組みたいこと
選んだコースで、あなたがソニーで取り組みたい内容について記述してください。
●興味／関心のあるカテゴリー
現時点であなたが興味／関心のあるプロダクト・サービスの領域・カテゴリーを選択してください。
●開発言語・ツール
　あなたが使用経験のある開発言語・ツールがあれば、チェックしてください（複数可）
●使用経験のある計測/実験機器や上記記載以外の開発言語・ツール
（電気計測器・光計測器、製造装置など）
使用経験のある計測/実験機器や上記記載以外の開発言語・ツールなどを記述してください。
●専門性（テーマ概要）
卒業／修士論文や、学科／専攻の授業の中で、最も力を入れて学んでいるテーマの概要を記述してください。
●研究成果の学会発表など
　研究成果の学会発表／論文投稿／特許取得、コンクールや大会での成績などがあれば記述してください。
●取り組み内容（必須）
あなたが何かを解き明かした・成し遂げた・作り上げた、いずれかの経験について、あなた自身のアプローチや工夫と役割、最終的な成果（物）がわかるように記述してください。

研究内容を具体的に、かつ分かりやすく伝えることを意識しました。また、どのようなプロダクトサービスに興味を持っているのか、その中で自分が何をしたいかを整理した。執筆後に最後に友達に添削してもらいました。

日頃から研究活動にきちんと取り組んでいることと、研究の内容や意義に精通していることが評価されていると感じました。

現場の技術者の方が２人で、いずれも気さくな方でした。一方で、研究に関する質問は鋭く、時に緊張感もありました。

あなたの研究内容を教えてください。

　私は現在、フォトニック結晶と呼ばれる数百nm周期の小さな構造に関する研究を行っています。この構造を用いると、光の閉じ込めや光速度のコントロールなど、通常の物質では不可能な光の制御を行うことができます。この研究は、基礎と応用の両方の側面を持っています。一つ目の目的は、特殊な構造の下での光の性質を調べることで、電子や音波などに共通する波の性質を明らかにすることです。波の振る舞いは数学や物理学によって記述され、様々なモノの性質は波を用いた単純なモデルで説明することができます。そのため、波の性質を知ることで、自然界のモノ全般の性質への理解を深めることができます。二つ目の目的は、光コンピューティングの実現です。パソコンやスマホのCPU演算を光で行うことで、消費電力や発熱の増加といった問題を解決することを目指しています。その他、透明マントや量子コンピューティングといった、画期的な技術への応用も期待されています。

光回路を実用化する上での課題は何ですか。

二つ挙げられます。一つは反射や後方散乱の問題です。従来のフォトニック結晶導波路中を伝搬する光は、反射や素子の不完全性に由来する散乱が生じるという課題があります。近年では、電子系で盛んに研究が行われているトポロジーの概念を用いて、反射や散乱に体制を持たせる研究が行われていますが、まだ基礎研究の段階です。もう一つは、スイッチングが困難であることです。従来のフォトニック結晶では、作り付けの穴や位置の変調によって光回路を生成しています。したがって、一度デバイスを作製すると回路内の光の性質が固定されてしまうため、外部信号の印加により後から自在に制御するといった事は困難です。このような制約は、集積回路を構成していく上でネックになります。

研究内容の深掘りについてはおおむね答えることができたと考えています。一方で、志望理由を詰めることができなかったと反省しています。今の研究と入社後の業務を結びつけ、志望度の高さをアピールすることに失敗しました。興味のある分野とは別の部署の面接であり、モチベーションが今一つであることを見抜かれてしまったのかもしれません。

冒頭はフランクでしたが、すぐに真剣モードになり、淡々と進んでいきました。深堀りの際には鋭い視線を感じ、緊張しました。

どういった基準で企業を選んでいますか。また、他にどんな企業を受けていますか。

1つ目は、専門性を活かせることです。ナノフォトニクスの研究では、光という自然の根本要素を自在に制御して応用するというテーマにやりがいを感じて取り組んでいました。社会人としても関連分野に就職することで、これまでのノウハウを還元しつつ、自分もやりがいを持って取り組むことができると考えました。2つ目は、自由闊達でボトムアップな環境があること。自分の考えや創意工夫を、最終成果物に活かすことができることが、モチベーションの源泉であるため、風通しのよさや上下関係なく議論できる環境に魅力に感じました。御社のほかには、日立やキャノンといったメーカーを受けております。
（実のところメーカーはここだけしか受けていませんでしたが、正直に金融やITも受けています、と答えると志望動機と矛盾するため、このように答えました。）

ディスプレイ開発に君の研究を生かすとしたら、どうすればよいと思いますか。

光の導波路と、ディスプレイの発光部分に応用することで、高性能化を図ることができると考えております。ディスプレイの光導波部分は光ファイバー等が用いられることがありますが、これをフォトニック結晶に置き換えることによって、より集積化、低サイズ化を目指すことが期待されます。また、フォトニック結晶導波路には高い波長選択性があるため、赤、青、緑といった特定の波長帯の光のみを効率的に伝番させることができます。そのため、原色光を効果的に伝搬させる必要のある部分は、フォトニック結晶を用いることのメリットが十分あると考えております。さらに、近年フォトニック結晶レーザーと呼ばれるコンパクトな単一波長光源が提案されており、これを発光部分に用いることで、より鮮やかで省電力なディスプレイが実現できるのではないかと考えております。