私の研究は,人の脳活動から心理状態を評価することです.近年,人々のライフスタイルの多様化により,製品開発において各々の心理状態に適したモノづくりが必要とされています.そこで研究の将来目標として一人一人の心理状態に適した製品を開発したいと考えています.このような製品の開発には,情動(心理状態)の評価が必要です.一般的に情動を評価するにあたり,自己申告による主観評価が用いられています.しかし,主観評価は定性的な評価である点,評価に時間がかかる点,言語の理解度によって解釈が異なる点などが問題点として指摘されています.そこで情動の基である脳活動に着目し,定量的な情動の評価手法の確立を目指しています.これまでは人の快・不快感などの情動は脳深部に現れると言われていることから,脳深部の測定が可能なMRIを用い,人の脳活動から心理状態を評価してきました.ところがMRIの計測には特殊な環境が必要であるため,実生活の空間で計測できないという問題点があります.将来目標を実現させるために,実生活の空間で計測可能機器として脳波計が挙げられます.更に脳波計はMRIと比べ時間分解能が高いという利点があります.近年,多チャンネルの脳波計及びソフトウェア技術の進歩により,脳波計での脳深部活動の推定は実現の可能性が出てきたものの,脳波計は今日でも主にてんかんの診断に使われる場合がほとんどであり,脳深部活動の研究においては未開拓のままです.そこでMRIでの深部活動結果と脳波計での深部活動推定結果を比較し脳波計の深部活動推定精度の検証を行うことで,仮にMRIのデータと相関があれば,脳波計だけで実空間で測定可能となると考えています.現在は,人に感情喚起画像を提示した時の脳の活動を,MRIと脳波計で同時計測し,得られた脳波データから脳の活動領域の推定の精度を検証しています.
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