私は,「金属-有機構造体(MOF)を前駆体としたZnO膜の微細構造制御と色素増感太陽電池(DSSC)への応用」という研究を行っています。DSSCとは,ZnOなどの酸化物半導体や色素,電解液から構成される太陽電池で,塗布・焼成など簡易なプロセスで作製できる,色素を用いているためデザイン性に優れるなどの特長があります。その電池性能は酸化物半導体のnm 〜μmの領域における微細構造を制御することで大きく向上し,DSSCに適した膜構造としては色素を多量に吸着させることができる比表面積の大きな構造や電解液の拡散を促進させるためのマクロ孔を持つ構造などが望まれます。一般的に,ZnOは溶液中においてロッド状やワイヤー状など1次元的な形態を取りますが,これらの形態は比表面積が低く,DSSCには適していません。そこで私たちの研究グループでは,溶液中で前駆体を合成し,熱処理などでZnOに変換する方法を採用しており, これまでに層状水酸化酢酸亜鉛(LHZA)などを前駆体として用いて花弁状ZnOナノシートを合成してきました。私の研究では,前駆体の新たな候補として金属-有機構造体(Metal-Organic Framework :MOF)に着目しました。MOFとは金属イオンと複数の配位部位をもつ有機配位子が結合し,周期的構造を形成した結晶性の化合物であり,金属イオンと有機配位子の組み合わせや反応条件を変化させることで多様な構造をとることが知られています。そのため,MOFを前駆体とし,熱処理条件を最適化することでMOF由来の3次元的な形態をもつ金属酸化物へと変換することができます。私の研究では,金属イオンにZn2+,有機配位子に2-メチルイミダゾールを用いた亜鉛系MOFの代表例であるZIF-8 (ZIF : Zeolitic imidazolate Framework)という物質を前駆体として用い,熱処理条件を検討することでZIF-8由来の特異的な形態をもつZnOを合成してDSSCの電極へ応用することを目的としています。
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