ヒトの鼻は呼吸を行うための鼻腔と,鼻腔の周りにある空洞部である副鼻腔から構成されています.副鼻腔には,上顎洞,篩骨洞,前頭洞,蝶形骨洞があり,この空洞内の粘膜が炎症を起こし,腫れてしまい膿が溜まると副鼻腔炎となります.副鼻腔炎を治療する手段として,内視鏡下副鼻腔手術があります.これは,鼻用内視鏡で鼻内から副鼻腔を観察し,鉗子などで粘膜をすこしずつ鉗除し,各副鼻腔と鼻腔の間に充分な交通をつける方法です.この手術では,主にマイクロデブリッター (以下, MDと表記) と呼ばれる器具を用いています.MDは,高速回転する刃で組織を切除し,吸引する吸引機付きのメスです.術者はMDを使用している際に,眼窩内側壁と呼ばれる眼窩と篩骨洞の間にある仕切りを傷つけないように注意を払います.通常では,手術の助手が眼球を前方から押し,眼球の動きを鼻内側から見ることによって,術者はMDがどれほど眼球に近づいているか確認します.しかし,この方法は患者への負担が大きく,常に眼球への負荷を監視できません.
そこで,両瞼にひずみを電荷に変換できる高分子フィルムを貼付し手術中に眼球に伝わる振動を計測します.振動データを計測し,手術器具が眼窩内側壁に近づいたことを定量的に判断し,振動特徴から眼窩への危険度を判定し術者に警告するシステムの開発を行っています.また,2016年鼻科学会にて発表も行いました.
今まで,本などの媒体でしか人体の知識を得ることがなく漠然としていました.そこで,医師に説明を仰ぐ際に用意せずに聞いていても認識することができなかったので内視鏡映像や画像を利用して説明を聞き,自分で理解しやすいようにしました.これは,他の人から物事を教えていただく際に活かすことができると思います.また,未知の分野に対して挑戦する度胸をこの研究を行う上で身に付けられました.
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