【研究テーマ】
○○経口摂取による抗老化作用の機構解明
【背景・目的】
老化は加齢に伴って生じる不可逆的な全身機能の低下であり、避けることのできない生命現象です。中でも、老化の影響が顕著に認められる部位のひとつが皮膚です。皮膚は体内と外部の環境を隔て、人体の恒常性を維持する重要な役割を果たしています。また、物理化学的刺激から生体を保護し、水分の透過や喪失を防ぐバリア機能を有します。加齢に伴う生理的老化によって皮膚の機能が低下すると、コラーゲンの減少や変性によって弾力性が失われ、シワが形成されます。また、水分蒸散量の増加により乾燥化が促され、皮膚状態の悪化に繋がります。
超高齢社会を迎える日本において、高齢者の健康増進は大きな課題です。そのため、若々しさを維持し健康な生活を営むため、老化の予防と改善に有効な物質の探索が進められています。しかし、老化現象の進行は個人差が大きく、医薬品による即効性の治療は難しいため、有効成分の習慣的な摂取が必要です。そのため、多様な生理活性を持つ食品成分の摂取が効果的と考えられます。加齢に伴う皮膚の菲薄化や乾燥化、シワ形成などといった老化現象を、食品成分の摂取によって抑制することができれば、高齢者の生活の質改善に繋がることが期待されます。
本研究で注目した○○は、脂溶性の天然色素成分である○○の一種です。○○や○○などの海洋生物をはじめとする自然界に幅広く分布していることから、食経験が豊富で安全性の高い食品成分です。また、極めて強力な抗酸化作用を有することから、機能性食品素材として注目されています。本研究室のこれまでの取り組みから、○○の経口摂取によって、UVA照射による経皮水分蒸散量(TEWL)の増加や角層水分量の低下、シワ形成が抑制されることが確認されています。そこで本研究では、○○の新たな有用性を見出すことを目指し、成分の経口摂取が皮膚に与える影響の評価と、そのメカニズム解明を目的としました。
【方法・結果】
(1)○○経口摂取が皮膚に与える影響の評価
○○マウスを2群に分け、下記の精製試料を8週間自由摂食させました。試験飼育期間中、背部皮膚のバリア機能および表面形状の評価を行いました。具体的には、○週間に一度、マウス背部皮膚の経皮水分蒸散量(TEWL)と表皮角層水分量を測定しました。また、皮膚のレプリカを採取し、反射用レプリカ解析システムを用いて、皮膚表面のシワについて三次元画像解析を行いました。その結果、○○摂食によって、加齢に伴う皮膚の水分蒸散が○○%減少し、シワ形成が有意に抑制されることが示されました。本研究室の以前の検討により、経口摂取された○○は、皮膚に蓄積することが確認されています。そのため、○○は経口摂取によって皮膚に到達し、抗酸化作用を十分に発揮して、あらゆる老化現象の原因となる活性酸素種の発生を抑えることで、生理的老化による皮膚のバリア機能低下とシワの形成を抑制した可能性が予想されました。
<被験試料>
コントロール群:標準試料
○○摂取群:○%○○含有○○(遊離型○○当量として○%配合となるよう、大豆油を○○含有○○油で置換したもの)
(2)○○の抗老化作用メカニズムの解明
上記の実験で使用したマウスから皮膚サンプルを採取し、RNAを抽出した後、リアルタイムRT-PCR法による遺伝子発現解析を行いました。その結果、天然保湿因子(NMF)の産生に関わる○○や○○が、○○摂取によって発現増加する傾向が認められました。NMFは、皮膚の角質層で○○や○○によって○○が分解されることで産生され、皮膚の保湿機能を担う因子です。表皮角質層は、内部からの水分の蒸散を防ぐバリア機能を有しており、NMFは角質層内において、水分と結合した形で存在します。したがって、○○は、皮膚において○○や○○の活性を高めることで、NMFの産生を促進し、皮膚中の水分量の加齢に伴う低下を抑制した可能性が考えられました。
【今後の展望】
○○摂取による生理的老化抑制作用に関して、より詳細なメカニズムの解明を目指します。そのため、表皮角化細胞の分化や増殖、バリア機能、シワ形成などに関わる遺伝子発現の変動解析を、より網羅的に行います。○○の抗老化作用の新規発見と機構解明は、老化現象に対する予防法の確立に役立つとともに、機能性食品素材の可能性を広げ、高齢者が若々しく生きるという価値提供に貢献できると考えます。
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