マーケティングが優れている商品として、私はネスレの「キットカット」を思い浮かべます。理由は2つあります。1つ目は消費者にとっての価値を生み出していることです。この成功事例は「受験生のためのキットカット」です。現在ではキットカットは、受験生に対して「きっと勝つ」の意味を込めて贈る定番の応援ツールとなっていますが、これはネスレの「広告より口コミで広げる」というマーケティング戦略による結果だと思います。キットカットを用いた応援は、九州の方言で「きっと勝つ」を意味する「きっと勝つとお」と「キットカット」の語感が似ていると九州の受験生の間で話題になったことが始まりだと言われています。この口コミを察知したネスレはこれに他にはない価値を見出し、さらに応援メッセージを書けるパッケージや包装に自分の好きな写真を載せられるサービスを考案しました。このように消費者にとっての価値を重視した結果SNSなどで話題となり、受験だけでなく恋愛、スポーツのシーンなどでも応援や感謝の気持ちを伝えるコミュニケーションツールとしての地位の確立に成功しました。2つ目は他社との差別化の成功です。これは「ブレイクを売るという商品コンセプト」によるものです。ネスレは「商品ではなくイメージを売る」というマーケティング戦略のもと、「疲れやストレスから開放してくれるチョコレート菓子」というイメージの確立に成功しました。もともとキットカットはイギリス企業の商品であり、「Have a break, have a KITKAT.」というスローガンのもとで売り出されていましたが、ネスレが買収により引き継いだ後もキットカットにしかない特徴を表すこのスローガンは使い続けられました。数ある競合商品の中からキットカットを選んでもらい確固たる地位を築くためにスローガンを見直したネスレは、「ブレイク」という言葉に注目しました。ここに含まれるブレイクには2つの意味があり、ひとつは「割る」ブレイク、もうひとつは「休憩する」ブレイクです。忙しい現代において消費者が求めているものは「ストレスからの開放」であるということを知ったネスレは、スローガンをもとにキットカットがブレイクを届けるというイメージを広げていきました。この2つの成功事例からも考えられるように、消費者にとっての価値と他との差別化を大切にするキットカットのマーケティング戦略は優れているものだと思います。
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