それは”ドラム”である。大学入学後軽音サークルに入り、皆がギターやボーカルを選ぶ中、初心者の私はドラムを選んだ。雨の日も風の日も少し離れた練習場まで自転車を飛ばし、練習に没頭することで初心者ながらにも順調に上達したが、練習方法が悪いのか一定のレベルに達した後伸び悩んでしまった。また同時期、無謀にもドラムが難しいコピーバンドを組んだものの、全くできず悔しくて合宿で人目を憚らず泣いてしまった。そこで私は状況を打開するためにプライドを捨てて、サークルでドラムが一番上手いが、正直あまり自分と合うタイプではなく、全く仲良くなかった後輩に、練習方法を教えてほしいと頼んだ。ネットよりも生の情報の方が信憑性があると考え、身近で自分より上手い人を真似る方が上達が早いのではないかと思ったからである。しかし、彼は教えてくれなかった。教えてもらうまで私は何回もご飯に誘い、距離を縮めつつ想いをぶつけた。新聞の営業時代の経験を通じて、自分の目的を果たすためには、立場に関係なく頭を下げなければいけないこともあると学んでいた私は、決して折れなかった。その甲斐あってついに練習方法を聞き出したが、彼の練習メニューが基本練習ばかりであることに驚き、なおかつその練習を自分がこなせないほど基礎的な部分が欠けていることに気づいた。こなせるように自分でより基礎的な練習を考え,徐々にレベルアップしていき、最終的には彼の練習メニューをこなせるようになり、さらに工夫してくことで成長の壁を超えることが出来た。この経験を通じて、頭で考えてもダメな時は、プライドを捨てて行動することで突破口が開けるのではないかということを学んだ。
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