私の研究室では、吸着剤、石油精製用工業触媒等に幅広く利用されている“分子ふるい”の元祖であるゼオライトに代表される無機多孔体の合成およびその応用に関する研究を行っています。
その中でも私は、4年生から大学院修士課程1年前期までは「ゼオライト水熱転換法によるディーゼル排ガス浄化用ゼオライト触媒の開発」をテーマとして研究を行いました。近年、ディーゼル車の排気ガス中に存在する人体や環境に有害な窒素酸化物NOxを無害なものに浄化する触媒として、銅担持小細孔ゼオライトの利用が注目されています。しかし、排気ガス中の600ºCを越える水蒸気を含む高温条件下での耐久性は未だ大きな課題とされています。そこで私はゼオライト構造を安定させる手段としてゼオライト骨格へのTi導入に着目しました。しかし、小細孔ゼオライトに対する効果的なTi導入は、従来のゼオライト合成手法では金属酸化物が生成してしまい、ゼオライトの結晶性が低下してしまうことなどから困難とされています。そこで私は原料にゼオライトを用いる新たなゼオライト合成法である「ゼオライト水熱転換法」を用いることで、NO除去に効果的なゼオライトにTiを導入し、耐久性の高いゼオライトの合成に成功しました。昨年6月には、これまでの成果をまとめて国際雑誌Advanced Porous Materials(4, 62-72, 2016)に投稿し受理されました。
修士課程1年後期からは、自らが見出した新たなテーマ、「水熱転換法によるLEVゼオライトナノ結晶の合成」の研究を行っています。ゼオライトは触媒として用いる際、ゼオライト骨格中に存在するミクロ孔が小さく拡散性が悪いため、その分子ふるいとしての特性を最大限に活かすことができません。そこでミクロ孔までの拡散性を向上させ、ゼオライト細孔内の触媒活性点にゲスト種がアクセスしやすくするために、ナノ粒子化などのゼオライトの結晶形態制御が試みられてきました。そこで私はゼオライトの結晶形態制御の手法として、ゼオライト水熱転換法に着目し、高結晶性のLEVゼオライトナノ結晶の合成に成功しました。現在は、本手法で合成したLEVゼオライトナノ結晶が通常のLEVゼオライトと比較して、エチレンの転換反応においてどのような影響を及ぼすのかを調査しています。
また、昨年9月には岩手県で開催された触媒学会主催の触媒討論会で口頭発表を行ったほか、同年12月に東京で開催されたゼオライト学会主催の研究発表会にて口頭発表を行いました。また、この7月にはこれまでの成果をまとめて第7回国際ヨーロッパゼオライト会議FEZA2017(ブルガリア開催)にてポスター発表を行う予定です。今後も学会発表だけでなく他大学や企業の方とのディスカッションも積極的に行い、自身の強みである粘り強さを活かして研究に取り組んでいきたいと考えています。
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