【背景・目的】適度な摂取カロリーの制限(CR)による抗
老化・寿命延伸の詳細な分子機構は不明ですが、オートファジーが注目を浴びています。化合物Xについて寿命延伸やオートファジー促進作用、メタボリックシンドローム予防などのCR様効果も期待されていますが、その分子機構は不明です。化合物Xが代謝改善作用を示すCR模倣薬となるかを明らかにするため、オートファジーに及ぼす影響とその機構を解析し
ました。【方法】マウス肝臓細胞Hepa1-6とマウス胎児線維芽細胞MEFsに化合物Xを処置しました。オートファジー機能への影響は、WesternBlot法によりオートファゴソームマーカーLC3と選択的基質p62タンパク質で評価しました。mRNAへ及ぼす影響はReal-TimeRT―PCR法で解析しました。活性酸素種(ROS)は蛍光プローブを用い、蛍光強度を定量しました。【結果・考察】「オートファジー機能解析」Hepa1-6で、化合物XはLC3-IIタンパク質量、p62のmRNA・タンパク質量を上昇させました。Atg5欠損MEFsでもp62タンパク質量を上昇させました。以上より、化合物Xはオートファジー誘導作用とp62発現誘導作用をもつことが示唆されました。「Keap1-Nrf2経路の解析」p62で活性化するKeap1-Nrf2経路に着目しました。化合物Xは転写因子Nrf2の核内発現量を上昇させましたが、p62欠損MEFsでは変化しませんでした。以上より、化合物Xはp62を介してNrf2の核内移行を促進することが示唆されました。「Keap1-Nrf2経路の開始点解析」p62の発現上昇のスイッチを特定するためによりp62の上流因子TFEBに注目しました。継時的に核画分のTFEBとNrf2のタンパク質を解析しました。Nrf2よりも早期にTFEBタンパク質量が上昇し、p62のmRNA発現量も上昇しました。以上より、前述までの機構はTFEBが開始点であることが示唆されました。「抗酸化機能解析」Nrf2の下流因子のmRNA発現を解析しました。Hepa1-6で、化合物Xは抗酸化下流因子Ho-1、Nqo-1のmRNA発現を上昇させました。そこでROSを定量しました。化合物Xの前処置でパラコートによるROS誘導は抑制され、抗酸化効果を示しました。以上より、化合物Xの抗酸化機構とその効果を明らかにしました。
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