私は、ブレインマシンインターフェイス(BMI)の精度向上を目指して研究しています。BMIとは、脳と機械を接続し、直接情報をやり取りする技術です。BMIを用いると、外部センサーによる認知機能の拡張や、思考による機器制御が可能となります。この特性から、BMI技術は介護、福祉分野での活用が期待されています。BMIの精度を向上させるには広く脳活動を記録することが重要です。現在主流のBMIは電極を用いて神経活動を記録しますが、この方式には脳の一部分の活動しか記録できないという欠点が存在します。そこで、脳の広範囲の神経活動を画像として取得することができる、広域カルシウムイメージングと呼ばれる手法に注目しました。本研究では、モデル動物にマウスを使用して光学的にBMIを実現し、それを用いた新たな脳機能解析手法の確立を目的としています。現在、神経活動の記録に必要な顕微鏡と専用ソフトウェアの作製が完了し、視覚刺激を提示した際の神経活動データの記録に成功しています。また、記録した神経活動データを用いて機械学習モデルを構築し、視覚刺激をした際の活動パターンを検出することに成功しました。現時点では、視覚刺激の活動パターンを検出するに留まっていますが、レバーなどを引かせた際の前肢運動の活動データを用いて、同様の手法でモデルを構築し、リアルタイムで前肢運動の活動パターンを検出することで基礎的なBMIを構築できると考えています。この研究を進める上で最大の障壁であったことは、このテーマが新規テーマであり、研究室内にBMIに関する知見や実験系がなかったことです。そのため、神経活動の記録に必要な顕微鏡やデータの記録・解析用のソフトウェア、実験装置を一から作り上げる必要がありました。その上、今年は新型コロナウイルスの流行があり、入学後しばらく大学に行くことができない期間がありました。そこで、その間に以下のことを実践しました。1.神経科学、画像処理、機械学習の教科書を読み、不足していた知識を補いました。2.マイコンボードを含む電子工作キットを購入し、基本的な電子回路を組めるように練習しました。3.先輩のデータを使って機械学習のプログラムを組むことで、データ処理技能の向上に努めました。これらの取り組みのおかげでBMIの基礎知識の習得ができ、必要な実験系の構築にスムーズに取り掛かることができました。
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