消化管トランスポーターOATP2B1に対するインスリンの影響について研究しております。インスリンが骨格筋などにおいてGLUT4の細胞膜移行を亢進し、血糖を降下させることはよく知られていますが、この細胞膜移行亢進に関与するRab8A(低分子量GTPaseの一つ)が消化管においても高発現し、消化管トランスポーターの細胞膜への局在に関与していることが近年明らかとなってきました。加えて、インスリン受容体の消化管上皮細胞への発現が報告されており、インスリンによって、消化管上皮細胞のRab8Aの活性化、ひいてはトランスポーターの細胞膜移行の亢進が起きる可能性が考えられます。当研究室では既にRab8AがOATP2B1に影響することを明らかとしており、私の研究では、消化管におけるOATP2B1の細胞膜発現・輸送活性に対するインスリンの影響を小腸上皮様に分化するCaco-2細胞を用いて検討致しました。インスリン処理後(100 nM, 10 min)、OATP2B1基質E3Sの取り込み実験(5 nM, 5 min)、及び、Caco-2細胞の膜抽出物とホールプロテインにおけるOATP2B1発現量をウェスタンブロットで評価することで、インスリンのOATP2B1への影響を検討致しました。取り込み実験では、インスリン処理によりE3S取り込みが有意に上昇することが明らかとなり、また、この亢進作用は4℃における取り込みでは見られないことが明らかとなりました。これより、受動輸送はインスリン処理によるE3S取り込み亢進には関与していないことが示唆されました。ウェスタンブロットにおいては、インスリン処理により、膜抽出物のOATP2B1発現量が上昇することが明らかとなりました。これより、OATP2B1膜発現量上昇がインスリン処理によるE3S取り込み亢進に関与することが示唆されました。また、ホールプロテインのOATP2B1発現量は変動しなかったことから、インスリン処理によるOATP2B1膜発現量上昇はOATP2B1の合成促進による相対的な上昇ではなく、既存のOATP2B1の細胞膜への移行亢進によるものであることが示唆されました。本検討により、Caco-2細胞において、インスリン処理によるOATP2B1基質輸送の亢進が確認され、また、それがOATP2B1の細胞膜移行によるものであることが示唆されました。
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