シンデレラ
ガラスの靴がピタリと嵌って、王子とシンデレラが再会してからのお話。王子と幸せな新婚生活を送るシンデレラ。
「シンデレラ、新婚旅行はどこがいい?」
「王子様、あなたと居られるだけで幸せよ。箱根か熱海で大丈夫。」
そんな風な会話をしながら、控えめなシンデレラと良家の王子様、2人で楽しく日々を暮らしました。
それから3年後。そろそろ結婚記念日です。シンデレラは、お城での裕福な生活で、すっかり煌びやかなお姫様になりました。
「なあシンデレラ、最近すこし、派手になったね。」
「やだわ王子様。街の女の子はこんなものじゃないわ。私は少し、地味な位。たまに、お姉様方に、お姫様なのに地味だと陰口を言われるのよ。」
「それは可哀想に。そろそろ結婚記念日だ。このカードで、たんとおめかししてきなさい。」
こうしてシンデレラが王子様のブラックカードを渡されるのは、今日で55回目です。少し世間知らずな王子様につけ込んで、頭の良いシンデレラは、欲しいものをどんどん手にして行きました。
いつものようにおめかしをして街に繰り出すお姫様。手にはブラックカードを握り締めています。すると、道端で、みすぼらしい男に道を尋ねられました。
「素敵なお嬢さん。駅への道を教えてくださいませんか?」
「…」
普段からスカウトされがちなシンデレラは、当然のように無視をしてお店に向かいました。
それから普段通り、王子様の公務が終わる前に帰宅し、お手伝いさんのご飯を自分の手作り風に繕っていると、王子様が帰ってきました。
「おかえりなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも…私にしますか?なんて!」
シンデレラはファンサービスも忘れません。ですが、いつもと違い王子様は、
「シンデレラ、ちょっとだけ話があるんだ。」
真剣な顔でそう言うと、離婚届けを差し出しました。
「は?これは何?いきなりどうしたんですか?王子様?」
シンデレラは動揺の色を隠せません。
「君は、もう昔の君じゃない。私の存在が、君を変えてしまったみたいだ。私は、今の君を愛せないよ。」
「何を言ってるの?王子様。私はいつでも私ですよ。昔から王子様一筋のシンデレラでございます。」
「そういうのもう大丈夫だシンデレラ。今日の公務の最中、妖精さんに頼んで、私は変身したんだ。それで偶然に見せかけて君に道を聞いた。昔の君なら、快く道を案内してくれただろうね。それが無視とは。ここまで変わると気持ち良い位だ。」
「王子様…私を試したのね!ひどい!信じてなかったの!それも妖精さんと結託するなんて手段を使って。私はこんなに王子様を想っているのに…酷すぎる!」
シンデレラは発狂しながら泣き叫びましたが、もはや取り繕う事は不可能でしょう。
すると、泣き叫ぶシンデレラの前に妖精さんが現れました。
「シンデレラ。もう12時を過ぎるわ。そろそろ潮時よ。元の姿に戻って、帰りなさい。」
妖精さんは、シンデレラを元のみすぼらしい格好に変えてしまいました。足元は走りやすいワンサイズ小さいスニーカー。脱げることなく、泣きながら前のお家に帰るシンデレラでした。
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